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【廃業に至る過程(その2)】

執筆者の写真: 杉町 徹杉町 徹

22年間の日本政策金融公庫勤務において、その半分以上返済相談や債権管理業務に携わりました。創業融資審査が事業のスタート地点に関わるのに対し、返済相談や債権回収はスタート後の山あり谷ありの地点に関わります。そのなかには想定外の事態から廃業に至る企業・事業者も少なくありません。

今回も引き続き見てきたパターンの一つを紹介します。


1.創業の不安から事業を友人や知り合いと共同で開始する。資金があれば法人設立しともに代表取締役となる、資金がなければ形上一方を従業員とするも関係は対等。


2.ボチボチ売り上げが確保できると創業時の危機感が薄れ、共同経営者の方針の違いや事務負担と報酬のバランスに双方の不満が溜まっていく。


3.事業の核心(アプリ開発ノウハウや商品の製造ノウハウ、メニューのレシピ等、そのほか顧客名簿や優秀な従業員)をめぐり囲い込みが始まる。


4.核心をつかんだと判断した一方がノウハウやレシピを持ち出して(従業員なら引き抜いて)、独立する。


5.双方の騒動が泥沼化の様相を呈し、顧客も騒動を嫌がって減少して共倒れとなる(まれに用意周到な片方が成功することはある)。



当初先行きの不安から共同戦線を張ったものの、ある程度軌道に乗ると共通の認識より認識の差異・待遇の差異が気になりだして仲違いに至り、よくて片方が事業閉鎖、悪いケースだと共倒れに至ります。


こうならないためのポイントは2点です。


第一に極力対等な関係では創業しないことです。

最初は対等と思っていても、次第に不満を感じるのが人間だと数多くの例を見て思いました。それはもう目の前でけんかを始めることも何回かあったものです。

法人であれば出資額・所得株式最初からある程度メイン・サブの関係で合意していると、それほど勢力争いや独立騒ぎは激しくなかった印象が強いです。特に事業の核心を握る側がメインを張ることが重要に思えました。


第二に人の考えは状況で変わるものと理解したうえで、最初の段階で業務分担(責任の所在)を明確にしておくことです。実際のアイデア出しは双方でおこなってもいいですが、分担内容・責任の所在は明確にしましょう。順調になってくると俺がやったからだと思うようになり、やはり相手方に不満を持ちやすくなります。

なんでも二人でやろうと言っていたのに俺が俺がと主導権争いになり、ひいては顧客から視線が離れ業績の悪化につながった例もありました。


いわゆる「仲間割れ」から廃業に至る過程につき解説しました。創業融資後の条件変更で一番多かったのは売り上げ目標の未達ですが、この「仲間割れ」廃業もいつも一定数ありました。人が2人集まれば意見が衝突するのは避けられないのでしょうね。

創業時は不安から一緒にやろうよ的な話をよく聞きますが、そのデメリットについても知っておいていただければと思います。




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