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執筆者の写真杉町 徹

【廃業に至る過程(その1)】

更新日:2022年5月17日

何年と日本政策金融公庫の支払相談業務に携わってきたなかで、様々な企業・事業者が廃業に至る過程を見てきました。

今回はその見てきたパターンの一つを紹介します。


1.ボチボチの収支だったところ規模拡大をおこなうも、思ったほど売り上げが確保できず収益が悪化する。


2.現預金が減少を続ける、社保や消費税、従業員の給与の順で支払が遅れだす。

いよいよとなり金融機関に融資の申し込みをおこなうが謝絶されリスケとなる。

(この段階でバラ色の事業計画書を持ってくる企業のなんと多いことか)


3.収支を改善すべく不採算事業や不採算店の閉鎖をおこなうが、自己や身内の役員報酬や過大な本社にかかる固定費用などには手を付けず、結局売上が減少しただけで収益は好転しない。


4.万策尽き事業閉鎖となる



事業が立ちいかなくなるケースはいくつかありますが、特に多かったのが無計画な(もしくは計画の甘い)事業拡大に伴う資金繰りの悪化でした。

新規店舗にかかる不動産業者・工事事業者が後ろにいてそそのかしていたんだろうなと思うことも多々ありました。実際業者への恨み言を、条件変更相談の場でいやというほど聞きました。

しかし基本的には自己の事業について責任を取ってくれるのは自分だけです。

あとからその業者に文句を言っても何にもなりません。


こうならないためのポイントは2点です。


第一点は規模拡大の判断です。

創業の時もそうですが、話を持ってくる人は基本的に自己の利益となるから持ってくるんです。甘い話で当然です、買ってほしいから、工事して欲しいから。

今の顧問先も最初は斜に構えていても接待を受けるうち、他の有名な経営者と話す場を持つうちに浮足立っていきます。もちろん私が冷静に判断し助言しますが。

自己の判断基準を厳しめに持ち、外部の意見に耳を傾けるくらいでちょうどいいと思います。


第二点は改善策の策定のタイミングと中身です。

あとになって借入金の支払いをリスケしたくらいで軽減する金額は知れています、しかも期限付きです。抜本的な改善をしなければ結局数か月か数年、資金がショートすることを延ばせるだけです。

上手くいっていないことに素早く気づき、まだ資金に余裕のある段階から対処すれば打つ手もいくつか考えられたかもしれません。間違いを認めたくなくてこの罠に陥っている企業をいくつか見ました。最後まで経営者は外部環境のせいにしていましたが、結局倒産しました。やはり外部の目、そしてその意見を聞く姿勢が大事と考えます。

そして改善策の中身です。基本自分に甘いですから、自分で考えた改善策が効果的かどうか、他者の目にさらす必要があると思います。それでも言いにくいことを他者(特に同業者や経営者仲間)が言ってくれることは少ないと思います、面倒だから。究極知ったこっちゃないから。

言いにくいことを言ってくれる人を持つことが結構大事だと、倒産の場を数多く見てきた者として思います。





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